長の小川です。
今回のお話は、嚙みしめについてです。
長年患者さんと接してきて、この嚙みしめは非常に厄介で、色々な悪い症状を起こす元凶なんです。
困った病態なんです。
噛み続け癖などと呼ばれることもあるこの癖は、食べていない時に、
不必要に上下の歯を接触させ続けてしまうというもの。
歯ぎしりや歯をくいしばる癖とは違い、意識せずに上下の歯が触れている状態のことです。
通常時、上下の歯はどのような状態が望ましいのでしょうか。
これを読んでいる今、お口はどのような状態になっているでしょうか。唇は閉じていますか? 開いていますか?
上下の歯をかんでいますか? それとも隙間がありますか? もし唇が閉じていて、
歯をかんでいないのであれば、安静時の口元は問題がないといえるでしょう。
筋肉も靭帯(じんたい)も全てがリラックスしている状態で、上の歯と下の歯の間は2~3ミリほど開いているはずです」
何もしていないときに少しでも上下の歯が触れ合っていると、それだけで「かみしめ」「食いしばり」というのでしょうか。
「かみしめ、食いしばりは強い力で上下の歯をかみ合わせることです。
上下の歯が軽く触れる程度では、かみしめ、食いしばりとはいえませんが、食事以外で歯の接触が常態化していることをTCH(Tooth Contact Habit=歯列接触癖)といい、
筋肉や靭帯、歯がリラックスできず、さまざまな部位に負担がかかります」
かみしめ、食いしばりと「歯ぎしり」の違いは。「歯は基本的には食べ物をかみ切り、かみつぶすためにあります。
つまり、本来は食事のときだけに機能するはずの器官ですが、本来の目的のとき以外に上下の歯をすり合わせたり、かみしめたりして接触させる動作は次の3つに分類されます。
・歯ぎしり...上下の歯を前後左右にすり合わせる運動で、睡眠時に起こることが多いです。ギシギシ、ギリギリと音が立つほどの力がかかることもあります。
・かみしめ、食いしばり...上下の歯を強くかみ合わせる動作のことです。音は立ちにくく、睡眠時にも覚醒時にも起こることがあります。
・タッピング...上下の歯をカチカチと何度もかみ合わせる動きです。 歯ぎしりは口元が動いて音もするので周りが気付きやすいですが、かみしめや食いしばりは音がしないので周囲も本人も気付きにくいです。
かみしめ、食いしばりと歯ぎしりのどちらが出やすいかは人によります。複合的に出ることもあります」
かみしめや歯ぎしり、TCHの原因は。「それぞれの原因は、睡眠時と覚醒時とで異なります。 睡眠時に起こるかみしめ、歯ぎしりは睡眠中の脳の活動によって引き起こされることが分かっています。
これには、ストレス▽性格▽遺伝▽飲酒▽喫煙▽特定薬の服薬▽特定疾患などが関与していると考えられます。
かみ合わせが原因との説もありますが、科学的根拠は示されていません。高い枕で上下の顎が近い位置関係になり、かみしめや食いしばり、歯ぎしりを起こしやすくなっている可能性もあります。
一方、覚醒時のかみしめやTCHもストレスが関係する場合がありますが、作業などに過度に集中しているときにかみしめたり、意識的に行っていたりする場合もあり、生活や環境の中で付いた"癖"と考えられます」
かみしめ癖などを放置すると、どうなるのでしょうか。
「食事で歯が接触する時間は1日計20分程度といわれます。しかし、かみしめ癖などで長時間上下の歯が接触すると、その分、正常でない力がかかり続けることになります。その力は男性で60キログラム程度です。 人体の中で最も硬い歯といえども、次第にすり減ったり、根元が欠けたりします。
それに伴い、知覚過敏や虫歯のリスクが高くなる他、歯茎の炎症、痛み、出血、骨が溶けるなど、歯周組織にも症状が出ることがあります。顎の関節にも負担がかかります。
口を大きく開けたときにカクカク音がするなど『顎関節症』の症状がみられたり、顎周りや首周りの筋肉に痛み、凝りを感じたり
ることもあります。
いかがでしょうか。
こんな症状は、ありませんか?
お心当たりの事がおありでしたら、何時でもご相談ください。