院長の小川です。 今回はとっても興味ある文献をご紹介いたします。 口腔細菌叢は生後4ヶ月から1歳半の間に急激に成熟し、1歳6か月児で既に成人の口腔細菌叢の土台が形成されていることが判った(九州大学)。特に甘味飲料やお菓子の摂取が多い等の食習慣がある1歳6か月児では、口腔細菌叢のバランス異常の兆候が既に認められた。このことは、離乳期や離乳完了直後の食習慣の管理によって、口腔細菌叢を健康なバランスに制御できる可能性を示唆している。 福岡市で行われた1歳6か月児健診を訪れた216名の乳児の口腔細菌叢を高精度に決定した結果である。現在、同じ対象者の3歳時点での検体を解析中である。 私たちの口腔には300〜700種類の細菌が生息している。歯をよく磨く人で1000〜2000億個、あまり歯を磨かない人では4000〜6000億個、さらにほとんど磨かない人では1兆個もの細菌が棲みついている。 口腔細菌叢のバランス異常が、う蝕や⻭周病などの⻭科疾患だけでなく誤嚥性肺炎等の呼吸器疾患や、大腸がん等の消化器疾患等、全身の疾患に関与していることが判明している今、乳児期からの母子協働による歯科医療の知見に基づく細やかな口腔管理は、健やかな人生を送るためのkey termだと言えよう。 口腔ケアは命を育むケアである。心と体に命の花を咲かすケアであり、生きていくためのレジリエンス(resilience)の源泉でもある。 【論文名】「Establishment of tongue microbiota by 18 months of age and determinants of its microbial profile」 いかがでしょうか。 考えさせられます。